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2013年3月28日木曜日

訪問販売によるモバイルデータ通信契約の解除に係る紛争


53 訪問販売によるモバイルデータ通信契約の解除に係る紛争 
平成25年2月4日付け東京都生活文化局
訪問販売によるモバイルデータ通信契約の解除に係る紛争
―東京都消費者被害救済委員会に付託― 
平成25年3月27日現在、まだ審議中という表示です。
公開されている概要(PDF)をみると、案件概要(紛争の概要)、付託理由、が記載されています。 

案件は、特段珍しいものではなく、「訪問販売で、モバイルWiFiルータの方が外出先でも使えて便利、光より速い、通信料金も安い、説明され、よくわからないが契約してしまった、回線品質が悪いので、9日後に解約したら 1 か月分の通信料金等と解約料金の合計で約4万5千円の請求された。」というもの。

注目したのは「付託理由」で 
通信契約は、特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)の適用除外となっているが、本件と同様の相談が多数寄せられている。相談の現場では解決困難な状況にあり、相談の解決指針が求められていることから、付託した。  
というところ。

通信契約と特商法適用除外に関する問題は、相談の現場で応対される相談員の人たちからも「どうしたらいいのか」と必ず受けるもの。

例えば
●「電気通信サービスの電話勧誘」(2012年7月4日)
 (岩手県民生活センター消費生活情報での紹介事例)
Q:インターネット回線(光ファイバーなど)の勧誘を受けた時はどんな点に注意したらよいのでしょうか。
 (相談の事例)
① 電話会社の代理店からプロバイダや光回線の利用を勧める電話が頻繁にかかってきて迷惑しています。どうにかできないでしょうか。(年代不明 男性)
② 現在利用している電話会社の光回線を「当社に乗り換えると料金が安くなります」という勧誘電話を受け応じました。その後家族から反対されたので翌日すぐに断りの電話を入れましたが、「電話で契約は成立しているので、キャンセルするならキャンセル料金が数万円かかります」と言われました。勧誘の電話に応じただけで、利用もしてないので納得いきません。クーリング・オフはできないのでしょうか。(40代 男性)

電気通信サービスにおける販売勧誘局面での消費者トラブルについては、内閣府消費者委員会でもヒアリングと議論がされていました。

 議事録は HTML版とPDF版が公開されています。


福岡市消費生活センターの説明には、電気通信関連での、あっせん率の高さと相談員の負担増、の指摘があります。
「本市においては、消費者に助言をして、消費者が自ら解決するための支援をするということを基本の解決方法としておりますが、消費者と事業者の間で交渉がうまくいかない場合、相談員が事業者との交渉を行う「あっせん」をしております。通常あっせんは相談全体の9%程度になっていますが、この分野に関しましては、あっせん率が20%前後と通常の倍以上となっており、消費者だけでは解決がつかないケースが増えておりまして、消費生活センターにとっても、相談員にとっても大変負担のかかる分野になっています。」

※ 赤字と下線は私が付しました。


 議事録は HTML版とPDF版が公開されています。


山口委員長代理の発言
~「代理店」に対する厳しい指摘が何ヵ所かあります。
「自主基準をつくられて、それの遵守を努力されようとしているのはよくわかりますけれども、第1次、第2次、第3次と代理店の末端まで行きますと、ほとんど電気通信事業者としてのセンスがない、ほかの事業をやっている事業者が、代理店としてついでにこの事業も行うというようなことになると、自主基準をきちんと守らせるということがどこまで徹底されているのか。そこが非常に疑問です。ことしの4月から自主基準を実施しているとおっしゃいますが、どこまでその効果が上がっているのか。代理店に対する周知徹底について、どういうふうにお考えなのか。」
「これは福岡市の消費生活センターから指摘があったのですが、代理店の紛争トラブルについての対応が悪いそうです。つまり、通常のあっせんになかなか代理店が応じていただけない。恐らく特商法の適用除外ということがあるものだから、通常の事業者の対応よりも紛争解決が難しいそうです。この辺は事業者を通して、代理店の紛争処理について、できるだけ消費生活センターなり、その他のあっせんに円満に応じて、リーズナブルな解決に努めるような実務上の御指導、これはお願いしたいと思います。あしたからの問題なので、是非お願いします。」
※ 赤字と下線は私が付しました。


消費者だけでは解決がつかないケースが増え、センターや相談員の双方に大きな負担となっている、しかし、「あっせん」に付される率も高いのに「あっせん」に応じないというのでは、解決に至るのはとても困難だと思われます。
発言に「恐らく特商法の適用除外ということがあるものだから」とあるように、この点を棚上げしていくのは限界に来ているのかもしれないと感じさせるやりとりです。

 議事録は HTML版とPDF版が公開されています。


・細川委員の発言
~「電気通信事業者の販売勧誘方法の改善に関する提言」に関しての発言
 「きょう、御説明したとおり、25年3月末時点までは様子を見て、そこで明確な改善が見られない場合は直ちに法改正も含めて対応することという、消費者委員会のかなり強い意思表示であります。きょうは、事業者あるいは事業者団体の方もお越しかもしれませんけれども、本当にひどすぎるというふうに多くの国民が思っていますから、ここでしっかりやるならやる。やれないのだったら法規制できっぱりやる。それについて、消費者委員会は明確な意思表示をしている、そういうふうに理解いただければと思います。」


●「電気通信事業者の販売勧誘方法の改善に関する提言

消費者委員会の発言にあった「電気通信事業者の販売勧誘方法の改善に関する提言」は2012年12月11日に公表されました。

「2.とられるべき対策」として、次の記載があります。
 総務省は、代理店を含む電気通信事業者による自主基準等の遵守の徹底を図るとともに、前述のクーリング・オフや自動更新の問題についても改善を促すこと。また、その改善状況の検証を行い、平成25年3月末時点での状況について、データを含む詳細がとりまとまり次第、速やかに当委員会へ報告すること。
 同検証において、相談件数が明確な減少傾向になる等の一定の改善が見られない場合には、総務省及び消費者庁は協議を行ったうえで、以下の(1)又は(2)いずれかにより、消費者が契約内容を十分理解して利用できる環境の実現を図るための法的措置を講じることを含め、必要な措置を検討し確実に実施すること

(1)電気通信事業法及び電気通信事業法施行令(昭和60年政令第75号)等を改正し、訪問販売、電話勧誘販売、通信販売において特定商取引法と同レベルの消費者保護規定を導入するとともに、店舗販売の場面においても契約者の年齢や知識を踏まえた説明を行うべきこと等の消費者保護に配慮した規定を設けることを含め、必要な措置を検討し確実に実施する。

(2)電気通信事業者の役務提供契約について、特定商取引法の適用除外を廃止するとともに、店舗販売においても(1)同様の消費者保護に配慮した規定を設けるべく電気通信事業法等を改正することを含め、必要な措置を検討し確実に実施する。
※ 赤字と下線は私が付しました。


電気通信事業法、特商法などの法改正を「含め、必要な措置を」とするにとどまっているので、消費者側が求めている法改正へすぐ結びつくものではありません。

ただ、解決の指針がないまま、相談を含む現場での、個別対応・解決だけに頼っている現状は、すでに担当する人たちが対応できる能力というかキャパシティの限界を超えつつあることは、上記の議事録や資料を見る限り、みてとれると思います。

今回の付託案件の結果を含め、今後、提言のいう「一定の改善」がみられるか(指針が打ち出せるか)、引き続きみていかないといけないですね。


【追記】

国民生活センターからもモバイルデータ通信絡みの発表がありました。

[2013年4月4日:公表]
モバイルデータ通信の相談が増加



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