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2013年6月19日水曜日

バーチャルオフィスの機能と法規制、電話受付代行業者及び電話転送サービス事業者における疑わしい取引の参考事例(総務省)

犯罪や悪徳商法にとっての「三種の神器」に関わる部分に関する法規制としての犯罪収益移転防止法に関して、総務省と警察庁の公表資料をメモ。


(1)警察庁生活安全局生活経済対策管理官
(平成25年2月)
平成24年中における生活経済事犯の検挙状況等について

「第1 概要」の「生活経済事犯の現状」の項目(上記1頁)では、未公開株商法やこうした商法の被害者救済を装った2次詐欺をはじめとした犯罪を「利殖勧誘事犯」とし、特定商取引法違反やヤミ金事案をともに、「犯行助長サービス」の提供停止を講じていく必要性、に触れられている。
そして、預貯金口座のほかに、「利殖勧誘事犯」ではバーチャルオフィス、レンタルオフィスが悪用される事例が目立つとされている。
第1 概要
 1 生活経済事犯の現状
  生活経済事犯のうち、利殖勧誘事犯(※1)及び特定商取引等事犯(※2)は、被害が減少しているものの、被害者中、高齢者の割合が非常に高い。
  ヤミ金融事犯(※3)の被害も減少しているが、いまだ暴力団の資金源の一部になっている状況がうかがわれ、被害が再び増加に転ずる懸念が完全に払拭できているわけではない。
  これらの生活経済事犯に対しては、これまで早期事件化に加え、犯罪利用口座凍結のための金融機関への情報提供を始めとした犯行助長サービス対策を推進してきたところ、昨今では、預貯金口座(以下「口座」という。)のほか、利殖勧誘事犯においてはバーチャルオフィス(※4)及びレンタルオフィス(※5)(以下「バーチャルオフィス」という。)に係るサービスが、ヤミ金融事犯においては携帯電話等に係るサービスがそれぞれ悪用される事例が目立つことから、犯罪の予防及び被害拡大防止を図るため、これら犯行助長サービスの提供停止に向けた対策を講じていく必要がある。

※1 未公開株、社債、外国通貨の取引、ファンドへの投資勧誘、投資被害の救済を仮装し、金を集める悪質商法。無登録金融商品取引業、預り金の禁止違反、無限連鎖講が典型。詐欺に当たるものも少なくない。
※2 訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引等で不実を告知するなどして商品や役務を販売する悪質商法。
※3 出資法違反(高金利等)及び貸金業法違反並びに貸金業に関連した詐欺、恐喝、暴行等に係る事犯。
※4 犯罪による収益の移転防止に関する法律第2条第2項第 38 号に規定するいわゆる郵便物受取サービス及び電話受付代行サービスを始め、いわゆる電話転送サービス等専用スペースを持たずに対外的な事務所機能を持つことができるサービスを提供するものをいう。
※5 通常の不動産賃貸物件と同様に郵便物の受取が可能であって、必要最低限のじゅう器等の設備が整っていることや狭小であること等から低い初期費用で直ちに利用が可能な個室型等の賃貸スペースを提供するものをいう。

こうした「利殖勧誘事犯」に対するバーチャルオフィスの悪用の実態と対策の状況については、「第2 検挙事件の事犯別状況」の「1 利殖勧誘事犯」(上記3頁以下)に統計を示しながら触れられている。
なかでもバーチャルオフィスについては、下記のような記載がある。
(2)対策の状況

イ 犯行助長サービス対策

(ウ)バーチャルオフィスサービス等の悪用実態の把握
利殖勧誘事犯では、バーチャルオフィスが被害者の取引の相手方となる法人の所在地として、又は郵便、電話等による連絡先として悪用されていることに鑑み、13 都道県警察において警察安全相談等で認知した利殖勧誘事犯を行っている業者(以下「業者」という。)(50 業者)と所在地・電話番号等が同一のバーチャルオフィス事業者(52 店舗)に対し、業者との利用契約実態を調べたところ、47 店舗で利用契約が確認できた。このうち、東京都内に所在するものが 45 店舗(95.7%)、東京都港区、中央区、新宿区及び千代田区内に所在するものが 33 店舗(70.2%)であった。
利用契約が確認できた上記 47 店舗のうち、契約時に本人確認をしていないものが4店舗(8.5%)、法人契約を締結していた 37 店舗のうち、15 店舗(40.5%)が法人自体の本人確認を行っていなかった。
また、47 店舗のうち、「犯罪に利用されていると思ったことがある」と答えたものが 23 店舗(48.9%)、うち「警察に届けたことがある」と答えたものは7店舗(30.4%)であった。また、この 47 店舗のうち、契約書や利用規約等に、犯罪に利用されていることが判明した際に解約するとの規定を整備していないものは6店舗(12.8%)であった。
 さらに、50 業者のうち、バーチャルオフィスを本店所在場所として商業登記していたものは 31 業者(62.0%)であり、うち当該バーチャルオフィスを本店所在場所として銀行等で口座開設していることが確認できたものが、27 業者(87.1%)であった。
以上のことから、業者は、契約時本人確認等犯罪悪用防止措置が不十分であるバーチャルオフィス事業者と契約を結ぶことによって、被害者や金融機関を信用させるため都心の一等地に事務所があるように装い、さらに同所を本店所在場所として商業登記した上で口座を開設しており、バーチャルオフィス、商業登記及び口座に係るサービスを複合的に悪用していることが判明した。
せっかく対策を講じても、確認義務が講じられていないのでは規制の効果が期待できなくなるところ、こうした実態は残念だと言える。

ヤミ金関係では、レンタル携帯が取り上げられている(上記14頁以下)。
3 ヤミ金融事犯
(2)対策の状況

イ 犯行助長サービス対策

(イ)悪用されたレンタル携帯電話の契約実態の把握
ヤミ金融業者その他の生活経済事犯を敢行する者には、自己への捜査を免れるためにレンタル携帯電話を悪用する状況が、また、レンタル携帯電話事業者の中には、法で定められた本人確認を履行することなく漫然と携帯電話を貸与している事業者が存在する状況が、それぞれ認められることに鑑み、平成 24 年中にヤミ金融事犯に悪用され、各都道府県警察において解約要請を行ったレンタル携帯電話 2,763 台のうち、追跡調査が可能な 91 台を選定し、契約実態について調査を行った。
そのうち、レンタル携帯電話事業者が本人確認記録として保管していた自動車運転免許証の写しに偽変造が認められたものは 39 台(42.9%)であり、また、携帯電話端末の受け渡し方法が手交であったもの 63 台のうち、契約・手交場所が路上等店舗でなかったものは 26 台(41.3%)、さらに、契約・手交場所が店頭であったもの 15 台のうち、法で定められた本人確認を履行しなかったものは5台(33.3%)であった。
以上のことから、レンタル携帯電話の契約実態に関しては、必ずしも契約時本人確認等犯罪悪用防止措置を十分に行っていないレンタル携帯電話事業者が存在することが判明した。

携帯電話契約に関しては、本人確認義務の徹底がなかなか実現せず、刑事事件とされるケースの報道も珍しくないところ。

●MSN産経ニュース(2013.5.15 )
(平成25年3月5日 報道資料)

別紙1
○電話受付代行業者及び電話転送サービス事業者における疑わしい取引の参考事例
別紙2
○犯罪収益移転防止法に関する留意事項について(電話受付代行業者及び電話転送サービス事業者)


バーチャルオフィスについては、犯罪収益移転防止法を念頭におくことが必要で、俗にいう「飛ばし」の携帯のほかにも、私設秘書箱や、電話転送サービスを使っている場合も比較的多い。
こうした事業者向けの規制で、効果があげていってもらい、「三種の神器」の有効性を低下、できれば根絶してもらいたいところである。







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